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何が問題だったのか―大坂のいじめ傷害致死事件

梅雨入り間もない6月8日。日没前後から雨が降り始めた大阪府河内長野市の公園に、傷だらけの男性が力なく横たわっていましたた。近くに住む専門学校生、工藤勇人さん(19)。意識不明の重体で搬送され、1カ月後に亡くなりました。工藤さんに暴行したとして、大阪府警は傷害容疑で高校時代の同級生2人を逮捕し、公判は今後、大阪地裁堺支部で開かれる予定です。

 

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これは、いじめが深刻化する方程式通りの事例なので、少々解説してみたいと思います。


まず、お母様が息子さんのことを語っていますが、

「小さいころは本当に天真爛漫でよく笑う子だった。亡くなる直前も、何の拍子か『お母さん、いつもありがとう』と言ってくれたのに…。主人も私も共働きで、あの子の苦しみに気づいてあげられなかったんです」ということです。

☆いじめの被害者は、現代ではこういう優しい子が標的にされます。

この後の、学校側の対応のところでも、本人のセリフが、それを端的に表していると思います。

 

さて、学校側の対応です。

 

実は、工藤さんは通学先の私立高校に「SOS」を発していた。高校2年の年末、保健室を訪れ、養護教諭に2人のうち1人の実名を明かし、いじめに近い状態にあると打ち明けていたのだ。

 だが、この情報が学校全体で共有され、対策が講じられることはなかった。

 「僕は小さいころから要領が悪くて、みんなにネタにされるんです。これ以上からかわれるのは嫌だし、自分のことで先生たちに迷惑をかけたくないので、このことは黙っていてくれませんか」

 

☆SOSを発信し、実名まで出していたのになぜ共有され、対策を講じることができなかったのか。

あろう事か、学校側は2人を「広い意味で友達と捉えていた」(教頭)ため、担任は「何かあったら工藤をかばったってくれよ」と、加害者の2人に呼びかけてしまったのだ。

イジメがなかなか発覚しない理由はここにあります。
いつも一緒にいるので、周囲が「広い意味で友だち」ととらえ、イジメも何等かのトラブルだと見過ごしてしまうのです。

 

この場合、加害者に「何かあったらかばってくれ」と、いじめの事実を誰かが教師に告げたことを加害者側に知らせることになっています。これは、いじめを深刻化させるだけです。加害者は、「大人が気づいたから、ほどほどにしておこう、やめよう」と考えるのではなく「よくもチクッたな。」「今度チクッたらどうなるか思い知れ」と考え、よりひどいイジメを行います。

 

☆被害者の「自分のことで先生に迷惑をかけたくないので」というのも、被害者が自分のことより他人のことを思いやる優しい子だったことがわかります。重大ないじめ被害者に、大人はよく「なぜ、こうなる前に誰かに助けを求めなかったのか」と問いますが、「人に迷惑をかけたくない」「自分へのいじめがなくなったら、どうせ誰かが標的にされてしまう」と考えるのです。そういう「よい子」がいじめの標的にされるのです。天使を狙う悪魔のような存在が現代のいじめ加害者だと考えたらわかりやすいと思います。

 

高校3年の11月、工藤さんはこの高校を退学し、通信制の別の学校に編入した。だが、その後も「いじめ」がおさまることはなかった。

 

☆これも、重大ないじめ被害の特徴です。いじめ加害者は、本人たちは否定しますがいじめ被害者に精神的に依存しており、ターゲットをいじめることで自分たちの存在を認めるストーカー的執拗さを持っていますので、周りの大人がしっかりと関係を断ち切り、再発防止の目を光らせていないと、どこまでも追ってきます。

 

教頭は「本人が嫌がっても、もっと介入して『いじめ』を聞き出すべきだった。こんな結果になったことを非常に悔やんでいます」と振り返った。

 

☆子供たちは、最初大人が介入することを拒みます。理由は

・報復を恐れる

・自分のために他人に迷惑をかけることに抵抗を覚える

ことが主な理由ですが、子供たちの中に「どうせ大人に言っても解決できるわけがない。これまでだったそうだったから。」という諦めがあるということも、私たち大人は覚えておく必要があると思います。

 

ですから、大人が「いじめはいけないことだ」「いじめる方が悪い」「いじめられる方は悪くない」と声をあげて、いじめ被害者がSOSを出しやすい環境を作ってあげることが重要なのです。

いじめ防止対策推進法という法律もできています。

 

「いじめは犯罪!絶対に許さない」という活動をこれからも地道に続けていきたいと思います。