いじめこうすれば防げる ノルウェーにおける成功事例2

いじめ こうすれば防げるのつづきになります。

 

家庭で参考になる箇所をご紹介していきます。

具体的なプログラムも盛りだくさんなので、教育界の方で具体的なことをお知りになりたい方は実際の本を読んでみることをお薦めいたします。

 

典型的ないじめっ子といじめられっこの特徴が紹介されています。

著者のダン教授は、13万人もの小中学生へのアンケートをベースにしています。

 

私どもいじめから子供を守ろうネットワークの相談件数が9000件ですが、まだまだサンプル数としては足元にも及びませんので学んでいきたいと思います。

 

【典型的いじめっ子の特徴】

典型的ないじめっ子のはっきりとした特徴は、いじめの定義が暗示するように仲間の生徒に対して攻撃的であることだが、こうした子供は教師、両親などの大人に対しても攻撃的であることが多い。いじめっ子は普通の子供に比べて、暴力及び暴力的手段に訴えることを好み、衝動的で他人に優越したい欲求が強い。彼らはいじめられる生徒に対してほとんど同情心をもたない。また、自分自身を比較的肯定的に見ており、男子の場合は平均的な少年、特に自分がいじめられている子供よりも身体的に強健であることが多い。

最近はいじめ防止対策推進法案ができたことにより、「いじめは犯罪」という認識が増えましたが、私がいじめ問題に取り組み始めたころは「加害者にも人権がある」「加害者にも理由がある」とよく言われました。特に、心理学の分野の方からは「いじめっ子の心理的ストレスを取り除くことが大切だ。」と言われました。これに関して、ダン教授によりますと

心理学者や精神療法家の間では、攻撃的で粗暴な行動様式を持っている人は、「一皮むけば」実際には不安感が強く、自信がない、と考えられている。そこで私はいくつかの研究で「間接的な方法」〈ストレス・ホルモンや特殊な性格検査など)を使って、いじめっ子は不安館が強く自信がないのかどうかを調べたが、そのようなことを支持する結果は全く得られず、むしろその反対であった。いじめっ子には不安感はあまり見られないか、みられても、だいたい平均程度であった。また自信にかけるということもなかった。

としています。注目すべき「いじめの心理的動機」ですが、

 

いじめ行動の根底には、少なくても3つの相互に関連した心理的動機があるとし、

1、力と優越に対する欲求が強く、他人を「支配」することを喜び、他人を服従させずにはおれない欲求がある

2、彼らの多くが育った家庭環境を考えると、彼らの心の中には、周囲に対するある種の適意があり、人を傷つけたり悩ませ足りすることによって、それらの感情や衝動を満足させていると考えられる

3、彼らの行動には「利益をもたらす要素」がある。彼らはしばしば、いじめられっ子に、お金、たばこ、ビールその他高価なものを貢ぐことを強制する。さらに、彼らは攻撃的行動によって自分の威信を高めている。

 

としています。これから紹介していく本の中で述べられているアメリカの別の心理学者も同様のことをのべていることから、いじめっ子はいじめ行動によって、何等かの欲求を満たしていることがわかります。

 

この攻撃的な子供を作る家庭環境として

第一に、両親、とくに子供の面倒を直接見る人〈多くの場合母親)の少年に対する情緒的態度、ことに子供の幼少時における基本的態度が非常に重要である。それらの人に子供への温かみと関心が不足し、子供に対して拒否的な態度をとっている場合、その子供が後になって他人に攻撃的で敵意を持つようになる危険性が高まる。

第二の重要な要因は、子供の面倒を直接見る人がどの程度、子供の言いなりになり、子供に攻撃的行動を許したかということである。そういう人が子供の攻撃的行動にはっきりした制限を設けることもなく、ただ子供のなすがままに任せている場合には、やがてその子の攻撃的傾向が高まる可能性が高い。

この二つの要因をまとめると

あまりにも愛情と世話が「少なく」、あまりにも自由が「多い」ことが攻撃的行動の発展に強く結びつく条件だといえる

とあります。

 

第三の要因は、両親が子供に対して力で押さえつける育児方法〈体罰や暴力で感情的な叱責など〉をとることである。中略 子供の行動にはっきりした制限とある種のルールを設けることは重要であるが、しかし、それは体罰などの暴力的方法によってなされるべきではない。

最後に、子供御気質もまた、部分的に、攻撃的行動を生み出す役割を果たす。活動的で「激しやすい」気質の子供は、普通の子供よりも攻撃的な若者になりやすい。

としていますが、この要因は、最初の二つの要因に比べると小さいそうです。

 

そして、結論として

養育時における親の子供への愛情と関心、してよいこと、してはいけないことのはっきりしたけじめ、暴力を使わない養育方法が、調和のとれた独立心のある子供をつくりあげる

としています。

家庭の役割は大きいですね。

 

次に、どんな理由があってもいじめはいけないので、書くのはどうしようかと思ったのですが、「予防的観点」の意味も含めて、「いじめられっ子」についてです。

 

典型的いじめられっ子の特徴として

受身的いじめられっ子は、不安感が強く、自信がなく、その上用心深く、神経質でおとなしい。中略 このタイプの子の行動と態度は「私は攻撃されたり侮辱されても仕返しをしない、不安で勝ちのない人間だ」というシグナルを他の生徒に送っているように見える。このような受身的いじめられっ子の特徴は、不安または従順な反応様式に身体的ひ弱さが結びついていることである。

としています。またもう一つのいじめられっ子として

〈それは少数であるが〉不安感と攻撃的様式が結び付いた挑発型いじめられっ子である。こうした子は過剰に活動的てで、集中力に欠け、周囲にいらいらと緊張をまき散らし、多くの生徒を刺激し、時にはクラス全員の拒否反応を引き出す。

としています。

 

いじめられっこの家庭環境については、いじめっ子ほど詳細な研究はされていないようですが、

典型的いじめられっ子は、平均的な少年に比べて、両親、とくに母親との関係が緊密なことである。

としています。

そして

不安感が強く、自信のない子を持つ母親は、その緊密な関係を過保護に終わらせず、将来わが子がいじめられないようにしてやるためには、その子が独立心と自信を持ち、仲間の中で自分を主張できる能力を身につけるよう助けることが重要である。

と結論づけています。

 

いじめ問題の古典と言われるだけあり、そのサンプル数も多く、非常に学び多い一冊です。

いじめ問題にかかわる方は、一読されるとよいと思います。