教室に正義を!いじめと闘う教師の13か条

この本は「教師を支える会」代表であり、スクールカウンセラーの方が書いたほんです。

 

スクールカウンセラーの方が書いた本ということで、子供たちの気持ちに寄り添う点はプロでもいじめを解決することはできないという実情を知っているので、正直あまり期待せずに読み始めましたが、読後感はすっきり!

とても共感できる本でした。

 

著者は「いじめ対応の王道は、いじめを許さない正義の感覚を育てること」と仰います。

まさにその通りだと思います。

 

著者の方が、いじめ問題の根深さに気づいたのは大学生のカウンセリングをしているときだったといいます。

 

学生相談をしていると、死にたいと訴える若者たちが少なくありません。また実際に自殺未遂をしたり、繰り返したりする学生も少なくありません。私のこれまでの経験で言うと、自殺を試みる学生、死にたいという学生の7-8割は、小中学校で何等かのいじめを体験しています。いじめのダメージはそれほど重いのです。

中略

いじめは、いじめられている子供を強い自己否定の状態におとしめていきます。こんな自分なんか値打ちがない、生きている価値がない、友達になるに値しない…そのような強い自己否定感にとらわれ、自殺に至ってしまうのです。

カウンセリングのご経験から、いじめられている子は自分がいじめられていることをなぜ言えないのかという点についても3つ明確にあげています。

1、親に迷惑をかけたくない、心配させたくない

2、先生に言うともっといじめがひどくなる

3、先生に言って、学校で指導が行われると、自分がいじめられていることが周囲に知られてしまい、いじめの事実が固定化されてしまうのがこわい

3つ目は、冷静に自分自身でいじめについて考えた上での対処で、いじめは一時的なものでそのうちターゲットが移っていく、だからその期間は「何もないこと」にしておくのが一番いい〈自分だけが我慢をすればいい〉と考えるのです。しかし、実際はこの無抵抗によりいじめは長期化していってしまいます。

 

その他いじめ認知件数等は、他の関連書籍でも触れいますので割愛しますが、カウンセラーらしくとてもいじめ被害者の心理がわかっているので、以下参考になることをご紹介いたします。

教師と保護者が言ってはいけない3つの言葉

1、そんなことぐらい気にしないようにすればいいのよ

2、もっとあなたが強くなればいいのよ

3、あなたにも悪いところがあるよね

教師や保護者は、「いじめに負けない子になってほしい」と願います。私もそう思う気持ちはあります。それを願うのは悪いことではありませんが、しかし、現在ただ今いじめ被害に会い続けている子にとっては、これは「あなたが悪いんだ」「弱いあなたがだめなんだ」と言われたように感じてしまい、自分が否定されたような気になってしまうのです。

 

いじめ問題が起きた時に、第一に優先すべきは被害者の保護です。それは心を守ることも含まれていますので、この3つの言葉は絶対に言ってはいけない、という主張に100%同意いたします。

また、学校に実際にいじめを解決してもらうための注意点として、学校主導で家庭とチームを作る、決して学校と対立に陥らないという点もあげています。

 

その他、いじめがひどい場合に、「転校」を考えた場合ですが、たいていの学校は最初はそれに対して抵抗します。

 

この理由として

1、自分の学校で起きた問題でよその学校に迷惑をかけたくない

2、自分の学校で起きた問題は自分の手で解決したい

という学校側の気持ちをよくまとめてくださっています。1は、体裁と整える感じがして、非常にいやな感じを持ちますが、実際は2も多いとのこと。「うちの学校で起きた問題は、私の手で、自分たちの手で何とかしたい。」と思う指導に熱心な方の方が多いとのことです。これは、教師の業だともおっしゃっています。

 

その他、転校を提示する場合の留意点にも触れられていて、とても参考になる内容でした。

 

また、日本の学校の現場の方が書かれているわりには、出席停止、別室指導の留意点にも触れられていて参考になると思います。〈実際、日本でもこれを行っている学校があることに正直驚きました。すばらしいです。〉

 

また、私たちが学校でいじめ防止授業をするときには、「いじめをなくす魔法の言葉」を伝えます。それはゴールデンルール「自分がされて嫌なことは人にしない」

これにたいしても、

自分がされたら嫌なことアンケートを最初にとって、この中から多くの子が選んだものを学級にルールとして設定するのです。

ととても実践的な方法を提示してくださっています。

 

そして、印象的だったのは「ひとりでいてもいい」ことを覚えることを子供たちに伝えることが大事だとおっしゃっています。

この年齢の子供たちは、孤立することを恐れて、自分を消して、グループに同化しようとします。いじめられっこだけでなく、ほとんどの子がおびえているのです。

 

子供たちにとって、何が一番の恐怖かというと「グループから排除されて一人ぼっちになる尾ではないか、孤立してしまうのではないか」というプレッシャー〈ピアプレッシャー〉を抱えていますが、それに対し

周囲の大人は、「そんな無理してつき合わなくてはいけないのは、友達なんかじゃない。」「ひとりでいてもいいじゃないか。先生があなたの一番の友達でいてあげる」とピアプレッシャーから解放するような言葉かけをしていく必要があります。

と述べています。まさに、ここは本当に大事なところです。

 

その他、マイナスの感情との向き合い方や、社会全体でいじめに対するセーフティネットをととても共感できる内容盛りだくさんでしたが、最後に

私は学校教育におけるいじめ対応の王道は、いじめがおきたらどうするか、という個別的な取り組みではなく、いじめが生まれないような正義の感覚に満ち溢れた学校づくりをしていくことに尽きると思います。

と最初にご紹介した言葉を述べておられます。まさに、その通りです。そのような学校が増えることを期待して、これからも活動を続けてまいりたいと思います。

 

最後に、この学校を正義の共同体にという考えに出てくる「正義の共同体」というのは、アメリカの発達心理学者ローレンス・コロンバーグが提唱したものです。このコロンバーグは、道徳性の発達段階として、「モラルジレンマ」という授業方法を行った方ですが、後年、彼は、道徳的問題についてこのような、話し合いではなくて、学校全体を道徳的な風土、つまり正義の感覚に満ち溢れた学校にしていくことを非常に重要視し始めました。いまだに、モラルジレンマを道徳的手法として取り入れるのは、「間違っている」と判断できる理由の一つとしてあげさせていただきます。