いじめ防止対策推進法とは6
今日、ご案内する第二十三条は、一番大切な内容です。
(いじめに対する措置)
だからです。
丁寧に条文を見ていきましょう。
第二十三条 学校の教職員、地方公共団体の職員その他の児童等からの相談に応じる者及び児童等の保護者は、児童等からいじめに係わる相談を受けた場合において、いじめの事実があると思われるときは、いじめを受けたと思われる児童等が在籍する学校への通報その他の適切な措置をとるものとする。
つまり、子供から「いじめの相談」を受けたら学校への通報とその他の適切な処置をとるようにといわれています。
2 学校は全校の規定による通報を受けたときその他当該学校に在籍する児童等がいじめを受けていると思われるときには、速やかに、当該児童等に係わるいじめの事実の有無の確認を行うための措置を講ずるとともに、その結果を当該学校の設置者に報告するものとする。
つまり、子供から「いじめがある」といわれたら、その事実の有無を確認し、いじめがあったなら対策をとり、その結果をよくも悪くも学校設置者に報告する義務があるのです。
最近の報道で問題になっているように「いじめだとは認識していなかった」という担任が多いようですが、報告があったがそれをいじめだと認識しなかったということも学校設置者に報告があるべきなのです。子供が死んでから、急に調査を調べたりするのではなく、「いじめがあるという申出を受けた」ということについては、報告をしておくことが義務付けられているということを本当に現場の教師たちは知っているのでしょうか?
3 学校は、前項の規定による事実の確認によりいじめがあったことが確認された場合には、いじめをやめさせ、及びその再発を防止するため、当該学校の複数の教職員によって心理、福祉等に関する専門的な知識を有する者の協力を得つつ、いじめを受けた児童等又はその保護者に対する支援及びいじめを行った児童等に対する指導又はその保護者に対する助言を継続的に行うものとする。
ここは大事なので太字にしました。
つまり、いじめがあったことが確認された場合には、いじめを止めさせ、再発防止に向けて継続的に支援、助言を行うことが義務付けられています。これを本気でやるのは、相当な覚悟が必要ですが、「決意」一つでやり切ることは可能だと思います。実際、そのような学校や教師も存在するのですから。しかし、大半の学校は、これをしたくないために「いじめの事実があった」ということを認めようとしないのです。
東北の事例ですが、証拠をそろえていじめを相談すると、その証拠の倍の反論資料を集めて「いじめではない」と言わることも相談事例の中にはあります。〈東北地方にこの傾向が多い、ということを申し添えておきます。〉
いじめの報道がある度に、世間一般の疑問は、なぜ「相談されたのに、それをいじめだと認識しなかったのか。」ということに集約されるかと思いますが、潜在意識の中に「なかったことにしたい」という思いがあることを、感覚からですが感じとっています。
4 学校は、前項の場合において必要があると認めるときは、いじめを行った児童等についていじめを受けた児童等が使用する教室以外の場所において学習を行わせる等いじめを受けた児童等その他の児童等が安心して教育を受けられるようにする。
つまり、多くの学校で行われているいじめ被害者の保健室登校ではなく、いじめ加害者を別室で指導することが定められているわけです。アメリカなどでは、これは当たり前で「別室指導」またはいじめ加害者を退校処分にしてアールタナティブスクールに通わせています。悪いことをした人の「学習する権利」よりいじめ被害者の学習する権利が優先されるのは当然のことだと思います。
5 学校は、当該学校の教職員が第三者の規定による支援又は指導若しくは助言を行うに当たってはいじめを受けた児童等の保護者といじめを行った児童等の保護者との間で争い起きることのないよう、いじめの事案に係わる情報をこれらの保護者と共有するための措置その他の必要な措置を講ずるものとする。
6 学校はいじめが犯罪行為として取り扱われるべきものであると認めるときは所轄警察署と連携してこれに対処するものとし、当該学校に在籍する児童等の生命、身体又は財産に重大な被害が生じるおそれがあるときは直ちに所轄警察署に通報し、適切に援助を求めなければならない。
つまり、「犯罪性のあるいじめについては学校が警察に通報」することが定められています。
横浜の原発いじめ事件では、「金銭の問題は警察に相談するように」と学校が保護者に伝えたと報じられていますが、こちらも明確にこの第二十三条違反だということが言えるわけです。
以上、大切ないじめ対策推進法案二十三条について述べました。
はやくこの法律が当たり前に守られる世の中になるよう願っています。
いじめ防止対策推進法とは5
第二十条(いじめの防止等のための対策の調査研究の推進等)
国及び地方公共団体は、いじめの防止及び早期発見のための方策等、いじめを受けた児童等又はその保護者に対する支援及びいじめを行った児童等に対する指導又はその保護者に対する助言の在り方、インターネット等を通じて行われるいじめへの対応の在り方その他のいじめの防止等のために必要な事項やいじめの防止等のための対策の実施の状況についての調査研究及び検証を行うとともに、その成果を普及するものとする。
アメリカやヨーロッパでは心理学者を中心に、いじめについての研究がなされています。日本でもようやくその方向に向かったというところでしょうか。
ちなみに、アメリカの学者エロン博士によりますと、
「いじめの加害者の男性は、DVをしやすく、女性は児童虐待をしやすい」とのことです。
日本でも、いじめの与える加害者への影響、被害者への影響等まで研究をして、腰の入ったいじめ防止対策が議論されることを望みます。
第二一条では啓発活動の規定です。
第四章 こちらで「いじめの防止等に関する措置」が定められています。
第二十二条(学校におけるいじめの防止等の対策のための組織)
学校は、当該学校におけるいじめの防止等に関する措置を実効的に行うため、当該学校の複数の教職員、心理、福祉等に関する専門的な知識を有する者その他の関係者により構成されるいじめの防止等の対策のための組織を置くものとする
これは「置くように」とか「置くことが望ましい」ではなく「置くものとする」です。
果たして、どれだけの学校が置いているでしょうか?
お子さんが通っている学校に聞いてみてください。
そして置いただけではなく、教職員に対してしッかりその理念を伝え、研修をすべきだと思います。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161202-00000028-asahi-soci
こんな事件も起きました。
担任は、子供に「菌」とあだ名をつけ呼んでいたにも関わらずそれを「いじめ」だと認識をしていなかったようです。
いじめ防止対策推進法とは4
第三章の基本施策についてみていきたいと思います。
第一五条は(学校におけるいじめの防止)です。
学校の設置者及びその設置する学校は児童等の豊かな情操と道徳心を培い、心の通う対人交流の能力の素地を養うことがいじめの防止に資することを踏まえ、全ての教育活動を通じた道徳教育及び体験活動等の充実を図らなければならない。
学校の設置者及びその設置する学校は、当該学校におけるいじめを防止するため、当該学校に在籍する児童等の保護者、地域住民その他の関係者との連携を図りつつ、いじめの防止に資する活動であって当該学校に在籍する児童等が自主的に行うものに対する支援、当該学校に在籍する児童等及びその保護者並びに当該学校の教職員に対するいじめを防止することの重要性に関する理解を深めるための啓発その他必要な措置を講ずるものとする。
つまり、学校はいじめを防止するための啓発運動、その他必要な措置を積極的に行うことを規定きているわけです。
一見すばらしい内容に見えます。これではいじめがなくならないこともわかりますが。
これがこの法律の限界だとも言えます。要は「いじめ防止対策」を推進するための法律なので、いじめ解決、対処推進法ではないわけです。予防をしているだけで終わらせることなく、「結果」
の具体的目標、それに対する責任の所在は不在なのですね。
次に第一六条(いじめの早期発見のための措置)
4項にわたり、学校設置者、国及び地方公共団体に対し、定期的な調査、その他の必要な相談の措置を整備するよう、そしていじめを受けた児童等の教育を受ける権利その他の権利利益が擁護されるよう配慮するものとする内容が明記されています。
しかし、ここ最近の報道を見る限り、これが有効に機能しているとは言い難いですね。
続きは、なぜかエディタの不具合で色指定ができなくなってしまったので分けますね。
いじめ防止対策推進法とは3
本日は、第九条の保護者の責務と、第二章 十条から十三条の基本方針、そして十四条の(いじめ問題対策連絡協議会)を見ていきたいと思います。
(保護者の責務)として、保護者は子の教育について第一義的責任を有する者であるとし、子供に対していじめを行うことの内容、規範意識を養うための措置、必要な指導をするよう努めようと定めております。また被害者になった場合には、適切に保護するものとするとも定めてあります。
つまり、いじめが起きたことを学校に報告をし、いじめを解決するよう、そして再発防止、学校全体でいじめをなくすようにしてくださいと要望することは、保護者の義務でもあり、それをしたからといって「クレーマー」や「うるさい親」と学校から認定されることは、この法律の条文を見る限りあってはならないものであると考えてよいと思います。
そして、この条文の最後には、この規定は、家庭教育の自主性が尊重とされるべきことに変更を加えてはならず、またいじめの防止等に関する学校の設置者及びその設置する学校の責任を軽減するものとしてはならない、とあります。
そして、第二章の十一から十三条において、地方や学校、各行政機関の長と連携して、
- いじめの防止等のための対策の基本的な方向に関する事項
- いじめの防止等のための対策の内容に関する事項
- その他いじめの防止等のための対策に関する事項
を踏まえて、基本的な方針を策定するよう定められています。
十四条(いじめ問題対策連絡協議会)では、
学校、教育委員会、児童相談所、法務局又は地方法務局、都道府県警察その他の関係者により構成されるいじめ問題対策連絡協議会を置くことができることを定め、
都道府県は、この連絡協議会と当該市町村教育委員会との連携を図るために必要な措置を定めるものとする、とあります。また、必要な場合には教育委員会に附属機関として必要な組織を置くことができるとあります。
自分の住んでいる地方自治体の現状をまず把握して、必要であれば、附属機関設置に向けて議員等に動いてもらうようにしてみるとよいと思います。
逆に、これだけ、事件報道がなされているのに、何も動いていないのであれば、その地方自治体は本当に「いじめ防止」を考えているのか?ということの指標にもなろうかと思います。
いじめ防止対策推進法とは 2
引き続き2013年施工の「いじめ防止対策推進法」についてです。
第4条には(いじめの禁止)として条文に、
児童等はいじめを行ってはならない
とあります。
この法律において児童等とは、「学校の罪跡する児童又は生徒」です。
また、第五条以下、には(国の責務)(地方公共団体の責務)(学校及び設置者の責務)が並びます。
そこには「第三条の基本理念にのっとり、いじめも防止等のための対策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する」ということが決められています。
注目すべきは、
第八条の(学校及び学校の教職員の責務)です。
条文には「学校及び学校の教職員は、基本理念にのっとり、当該学校に在籍する児童等の保護者、地域住民、児童相談所その他の関係者との連携を図りつつ、学校選対でいじめの防止及び早期発見に取り組みと共に、当該学校に在籍する児童がいじめを受けていると思われるときは、適切かつ迅速にこれに対処する責務を有する」
とあります。
つまり、「いじめがある」ことについては早期発見に取り組まなければならないし、
「いじめを受けていると思われるときは」「適切」かつ「迅速」にこれに対処する責務を有するのです。
ここ何日かで報道されている青森の中2女子のいじめ自殺事件も、横浜の原発いじめ事件も
この第8条に違反していることは明白なわけです。
しかし、違反しても罰則規定がないので、学校の現場は相変わらず「いじめはなかったこと」にしたいようです。
この罰則規定に関しての、いじめ防止対策協議会での委員のやり取りは、先日ブログで紹介した通りです。
子供達が安心して通える学校の実現を一日も早く願います。
いじめ防止対策推進法とは1
2013年、いじめ防止対策推進法が施行されましたが、まだ、悲しい事件が続いていますね。
報道を見る限り、現場にはこの「法律の内容」が浸透していないように思います。
いじめ問題に関しての本を紹介してまいりましたが、そちらをしばしお休みいたしまして、この法律の内容を丁寧に見ていきたいと思います。(一応、司法試験の勉強を一年だけして択一A判定も出たことがあるので、法律の条文は読みますのでご安心を(*^^)v こんなにいじめ問題にかかわることになるのだったら勉強を継続しておけばよかったかもしれません。当時は、学習塾での勉強法を自分で試したかったくらいの気分でした 笑)
この法律は、全部で6章でなりたっております。
第一章 総則
第二章 いじめ防止基本方針等
第三章 基本的施策
第四章 いじめの防止等に関する措置
第五章 重大事態への対処
第六章 雑則
です。
今回は、第一章の総則からみていきますね。
まずは、この法律の目的として第一条で、「いじめがいじめを受けた児童等の教育を受ける権利を著しく侵害し、その心身の健全な成長及び人格の形成に重大な影響を与えるのみならず、その生命または身体に重大な危険を生じさせるおそれがあるものであることに鑑み、児童等の尊厳を保持するため、いじめの防止等のために対策に関して、基本理念を固め、国および地方公共団体等の責務を明らかにし、方針や対策の基本となる事項を定めていじめ防止等の対策を推進する(条文要約)」としています。
つまり、いじめはしてはいけないと法律で決めて、そのための責任の所在を明らかにし、対策等の基本方針を決めますよ、と言っているわけです。
いじめはいけないことなのです。
では、第二条では「定義」を定めています。
いじめの定義を抜粋いたしますと、「児童等<児童、生徒のこと>に対して、当該児童が在籍する学校に在籍している等当該児童と一定の人間関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為[インターネットを通じて行われるものを含む)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいう」としています。
つまり、いじめの現場は「学校」である、ということです。
第三条の基本理念では、「いじめ防止等のための対策は、いじめが全ての児童等に関係する問題であることに鑑み、児童等が安心して学習その他の活動に取り組むことができるよう、学校の内外を問わずいじめが行われなくするようにすることを旨として行わなければならない」とあります。
「全ての児童等がいじめを行わず、及び他の自動等に対して行われるいじめを認識しながらこれを放置することがないようにするため」という文言もあります。
つまり、いじめを<学校から>なくそうと言っているのです。
これ以降のこの法律について、すべて述べていきたいと思いますが、ざっと見たところ「いじめを認識しながらこれを放置することがないようにするため」をを児童等には課しているいるにもかかわらず、教師には課していないようです。
しかし、報道されいじめ自殺事件、その他のいじめ事件を見ても「学校側の放置」「教師の放置」がいじめを重大化、長期化させていることは明らかです。
いじめをなくすための法律ではあるものの、片手落ちなのではないか、と思わざるを得ません。今後も「いじめ防止」をより実効的なものとするため、努力してまいりたいと思います。
福島からの避難児童いじめに思うこと
今日は、こんな記事がありましたので、いじめ関連書籍の紹介をお休みして、こちらを取り上げたいと思います。
東京電力福島第1原発事故で福島県から横浜市に自主避難した中学1年の男子生徒(13)が、転入先の市立小学校でいじめを受けて不登校になった問題で、生徒側の代理人の弁護士が15日、記者会見し、生徒の手記と保護者の声明を公表した。生徒は手記の中で「いままでなんかいも死のうとおもった。でも、しんさいでいっぱい死んだからつらいけどぼくはいきるときめた」などと書き記していた。【水戸健一、福永方人】(毎日新聞)
「賠償金をもらっているだろう」と金銭を強要され、「ばいきん」と言われたそうですが、この背後には大人の影がちらほら見えます。
小学生が、「賠償金をもらっている」と発想すること、そして放射能に対する無知、無理解なマスコミ報道、そして大人たちの放射能アレルギーの空気がこのようないじめの遠因になっているのは間違いありません。
もちろん、だからと言って、いじめ加害者が許されるわけではありませんが。
また、注目すべきは、
- 「金銭の要求を学校はしっていたのに保護者に知らせなかった。」
- 市教育委員会の第三者委員会が公表した報告書のうち、いじめの内容を記した多くの部分が黒塗りだった
の2点です。学校側、そして教育委員会に積極的にいじめの全容を解明し、解決を図り、次にいじめをなくすために努力しようという姿勢が伺えません。
11月2日、「いじめ防止対策法の施行状況に関する議論のとりまとめ」が発表されました。
教職員の懲戒処分についても言及していますが、提言での懲戒処分に関する記述は、決定前の「素案」よりも大きく後退してしまいました。
「素案」の段階では、本文に、「いじめの情報共有は法律に基づく義務であり、…
対応を怠ることは地方公務員法上の懲戒処分となり得ることを周知する」と記されていましたが、
最終的な提言では、※を付して、
「教職員がいじめの情報共有を怠り、地方公務員上の懲戒処分を受けた事例もある」と
欄外に押しやられてしまいました。
いじめから子供を守ろうネットワークでは、「いじめ防止対策協議会」を傍聴しました。
一番紛糾したのが、この懲戒処分に関する議論だったそうです。
前回の会議で懲戒処分が検討されていることが報道されたことで、
同協議会の委員たちからは、
- 「現場の教師たちは、『オレたちを信用しないのか』と怒っている」
- 「(周囲の学校関係者たちに)『あなたが委員ならなぜ反対しないのだ』と言われた」
- 「遺族の方も懲戒処分を望んでいるわけではないと思います」
などと次々に教師側の立場からの反対意見が出されました。
唯一、弁護士の委員が、
「いじめ防止法が施行されてから3年の間に起きている事実を見れば、
いじめ防止法に義務づけられている情報共有を怠った場合には、
地方公務員法により懲戒処分になりうることを明記すべきである」旨、発言しましたが、
多勢に無勢で、「懲戒処分になりうる」と明記することは見送られてしまいました。
最終的には、この委員が、「反対意見があるとか、事例として書くとか、残してほしい」と言ったことで、
提言では、欄外に、何とか
「教職員がいじめの情報共有を怠り、地方公務員上の懲戒処分を受けた事例もある」の文字が生き残ったわけです。
※一部、いじめから子供を守ろうネットワークメールマガジンより引用
このように、法律ができたところで、現場が「いじめをなくそう」という思いがなく、自分たちの保身に汲々としている現状では、いじめがなくなる、少なくなるといった「希望」が見えてきません。
何より、この現状をみて暗澹たる思いでいるのは、いじめの被害者と傍観者、そして喜んでいるのはいじめ加害者でしょう。
こう考えたときに、現場の教師をはじめとする大人としてやらなければいけないことが見えてくるように思います。