いじめ防止対策推進法とは8

ひきつづき「いじめ防止対策推進法」です。

 

第二十七条からみていきますね。

 

第二十七条(学校相互間の連携協力体制の整備)

地方公共団体は、いじめを受けた児童等といじめを行った児童等が同じ学校に在籍していない場合であっても、学校がいじめを受けた児童等又はその保護者に対する支援及びいじめを行った児童等に対する指導又はその保護者に対する助言を適切に行うことができるようにするため、学校相互間の連携協力体制を整備するものとする。

 

つまり、いじめ被害者が不登校または転校になっても、加害者、被害者双方のケアのために学校間の相互効力体制を整備するよう定められたわけです。

 

学校間の連携の悪さ、報告、連絡、相談体制のひどさはいじめ相談の現場にいるとよくわかります。例えば、拙書「いじめ相談の現場から いじめられっこを子供に持つ両親のための具体的対処法」の事例でも取り上げましたが、少々コミュニケーションに弱点があることを懸念して、入学前に学校に相談にいき、情報を両親、教務主任、校長で共有して、安心して入学したところ、前任者の教務主任、校長は人事異動でいなくなっており、さらに驚くべきことには、後任者にまったく引き継ぎされていなかったということがありました。

 

もっと驚くことには、当初、引継ぎを受けていないということも「受けている」とウソをついていたのです。

 

 

 

法律で連携をすることを定めたことは、画期的ではあると思いますが、これも現場の意識改革がきちんとなされないと「絵に描いた餅」で終わる可能性があります。

 

こちらに対しても「守られなかった場合」についての規定もあるべきでしょう。

 

第五章からは、重大事態への対処 です。

 

第二十八条 (学校設置者またはその設置する学校による対処)

学校の設置者又は、その設置する学校は、次に掲げる場合には、その事態(以下、「重大事態」という。)に対処し、及び当該重大事態と同種の字体の発生の防止に資するため、速やかに、当該学校の設置者又はその設置する学校の下に組織を設け、質問票の仕様その他の適切な方法により当該重大事態に係わる事実関係を明確にするための調査を多なうものとする。

一、いじめにより当該学校に在籍する児童等の生命、心身又は財産に重大な被害が生じた可能性があると認めるとき。

二、いじめにより当該学校に在籍する児童等が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるとき

三、第一項の規定により学校が調査を行う場合においては、当該学校の設置者は、同行の規定による調査及び前項の規定による情報の提供について必要な指導及び支援を行うものとする。

 

つまり、命や体、または金銭の要求等で財産が侵害されているようなときには必要な調査をして、それに基づいて必要な指導及び支援をしなさい、と定められています。

 

つい、最近話題になった横浜市の福島からの転校生に対するいじめの学校の対処をみると、明確にこれに違反していることはわかります。

 

金銭の要求があったことを把握しながら、それに対する対応もせず、保護者にもすぐに連絡をせず、挙句の果てに「警察に行ってください」ではなく、学校が警察に連絡すべき事例であったと思います。

 

交通事故も道交法だけ、信号をつけただけれはなくなりません。違反をすると罰則があるから、なくなりはしないまでも「減っている」のです。いじめをなくしたかったら、減らしたかったら、法律違反に対する処罰、罰則規定もなければ「片手落ち」だと思うのは私だけでしょうか?

いじめ防止対策推進法とは7

つづいて、いじめがあった場合の学校設置者による措置、そして加害者への対処等をみてまいります。

 

第二十四条(学校の設置者による措置)

学校の設置者は、前条第二項の規定による報告を受けたときは、必要に追う詩、その設置する学校に対し必要な支援を行い、もしくは必要な措置を講ずることを指示し、又は当該報告に係わる事案について自ら必要な調査を行うものとする。

 

つまり、いじめの報告を受けた場合学校に対していじめ解決への適切な処置、また独自調査を規定しています。学校設置者は常に「いじめはあるか」という前提で学校を監督しなければならないということです。

 

第二十五条(校長及び教員による懲戒)

校長及び教員は当該学校に在籍する児童等がいじめを行っている場合であって教育上必要があると認めるときは、学校教育法第十一条の規定に基づき、適切に当該児童等に対して懲戒を加えるものとする。

 

第二十六条<出席停止制度の適切な運用等)

市町村の教育委員会は、いじめを行った児童等の保護者に対して学校教育法第三十五条第一項(同法四十九条において準用する場合を含む。)の規定に基づき、当該児童等の出席停止を命ずる等、いじめを受けた児童等その他の児童等が安心して教育を受けられるようにするために必要な措置を速やかに講ずるものとする。

 

ここは、いじめ防止についてかなり進んだところです。今まではいじめ被害者側が不登校保健室登校と教室から除外されることが通常でしたが、この法律では「いじめを受けた児童とその他の児童等」の学習を受ける権利を明確に保護したわけです。

 

しかし、最近のいじめ問題の報道を見る限り、学校側が積極的にこの規定を守ったり、措置を適用している状況にはないようです。

 

これでは、「いじめを受けている子の学習する権利を守る」というこの法律の理念は実現できません。

また、いじめ加害者への処罰規定は明確にされているのに、いじめを隠ぺい放置した教師、職員に対する処罰規定はありません。これが、今の「法律ができてもいじめはなくならない」状況を生んでいると思います。

 

せっかくの法律を実行性のあるものにするために、いじめ隠蔽に関する処罰規定を考える時期にきているのではないでしょうか?

いじめから子供を守ろうネットワークの有志も何名か、この処罰規定に関する陳情をあげているようです。先日は、茨城県竜ケ崎のサポーターの方からご連絡をいただきました。

 

いじめ防止対策推進法とは6

今日、ご案内する第二十三条は、一番大切な内容です。

(いじめに対する措置)

だからです。

 

丁寧に条文を見ていきましょう。

 

第二十三条 学校の教職員、地方公共団体の職員その他の児童等からの相談に応じる者及び児童等の保護者は、児童等からいじめに係わる相談を受けた場合において、いじめの事実があると思われるときは、いじめを受けたと思われる児童等が在籍する学校への通報その他の適切な措置をとるものとする。

 

つまり、子供から「いじめの相談」を受けたら学校への通報とその他の適切な処置をとるようにといわれています。

 

2 学校は全校の規定による通報を受けたときその他当該学校に在籍する児童等がいじめを受けていると思われるときには、速やかに、当該児童等に係わるいじめの事実の有無の確認を行うための措置を講ずるとともに、その結果を当該学校の設置者に報告するものとする。

 

つまり、子供から「いじめがある」といわれたら、その事実の有無を確認し、いじめがあったなら対策をとり、その結果をよくも悪くも学校設置者に報告する義務があるのです。

 

最近の報道で問題になっているように「いじめだとは認識していなかった」という担任が多いようですが、報告があったがそれをいじめだと認識しなかったということも学校設置者に報告があるべきなのです。子供が死んでから、急に調査を調べたりするのではなく、「いじめがあるという申出を受けた」ということについては、報告をしておくことが義務付けられているということを本当に現場の教師たちは知っているのでしょうか?

 

3 学校は、前項の規定による事実の確認によりいじめがあったことが確認された場合には、いじめをやめさせ、及びその再発を防止するため、当該学校の複数の教職員によって心理、福祉等に関する専門的な知識を有する者の協力を得つつ、いじめを受けた児童等又はその保護者に対する支援及びいじめを行った児童等に対する指導又はその保護者に対する助言を継続的に行うものとする。

 

ここは大事なので太字にしました。

 

つまり、いじめがあったことが確認された場合には、いじめを止めさせ、再発防止に向けて継続的に支援、助言を行うことが義務付けられています。これを本気でやるのは、相当な覚悟が必要ですが、「決意」一つでやり切ることは可能だと思います。実際、そのような学校や教師も存在するのですから。しかし、大半の学校は、これをしたくないために「いじめの事実があった」ということを認めようとしないのです。

 

東北の事例ですが、証拠をそろえていじめを相談すると、その証拠の倍の反論資料を集めて「いじめではない」と言わることも相談事例の中にはあります。〈東北地方にこの傾向が多い、ということを申し添えておきます。〉

 

いじめの報道がある度に、世間一般の疑問は、なぜ「相談されたのに、それをいじめだと認識しなかったのか。」ということに集約されるかと思いますが、潜在意識の中に「なかったことにしたい」という思いがあることを、感覚からですが感じとっています。

 

4 学校は、前項の場合において必要があると認めるときは、いじめを行った児童等についていじめを受けた児童等が使用する教室以外の場所において学習を行わせる等いじめを受けた児童等その他の児童等が安心して教育を受けられるようにする。

 

つまり、多くの学校で行われているいじめ被害者の保健室登校ではなく、いじめ加害者を別室で指導することが定められているわけです。アメリカなどでは、これは当たり前で「別室指導」またはいじめ加害者を退校処分にしてアールタナティブスクールに通わせています。悪いことをした人の「学習する権利」よりいじめ被害者の学習する権利が優先されるのは当然のことだと思います。

 

5 学校は、当該学校の教職員が第三者の規定による支援又は指導若しくは助言を行うに当たってはいじめを受けた児童等の保護者といじめを行った児童等の保護者との間で争い起きることのないよう、いじめの事案に係わる情報をこれらの保護者と共有するための措置その他の必要な措置を講ずるものとする。

 

 

6 学校はいじめが犯罪行為として取り扱われるべきものであると認めるときは所轄警察署と連携してこれに対処するものとし、当該学校に在籍する児童等の生命、身体又は財産に重大な被害が生じるおそれがあるときは直ちに所轄警察署に通報し、適切に援助を求めなければならない。

 

つまり、「犯罪性のあるいじめについては学校が警察に通報」することが定められています。

横浜の原発いじめ事件では、「金銭の問題は警察に相談するように」と学校が保護者に伝えたと報じられていますが、こちらも明確にこの第二十三条違反だということが言えるわけです。

 

以上、大切ないじめ対策推進法案二十三条について述べました。

 

はやくこの法律が当たり前に守られる世の中になるよう願っています。

 

 

 

 

いじめ防止対策推進法とは5

第二十条(いじめの防止等のための対策の調査研究の推進等)

国及び地方公共団体は、いじめの防止及び早期発見のための方策等、いじめを受けた児童等又はその保護者に対する支援及びいじめを行った児童等に対する指導又はその保護者に対する助言の在り方、インターネット等を通じて行われるいじめへの対応の在り方その他のいじめの防止等のために必要な事項やいじめの防止等のための対策の実施の状況についての調査研究及び検証を行うとともに、その成果を普及するものとする。

 

アメリカやヨーロッパでは心理学者を中心に、いじめについての研究がなされています。日本でもようやくその方向に向かったというところでしょうか。

 

ちなみに、アメリカの学者エロン博士によりますと、

「いじめの加害者の男性は、DVをしやすく、女性は児童虐待をしやすい」とのことです。

日本でも、いじめの与える加害者への影響、被害者への影響等まで研究をして、腰の入ったいじめ防止対策が議論されることを望みます。

 

第二一条では啓発活動の規定です。

 

第四章 こちらで「いじめの防止等に関する措置」が定められています。

 

第二十二条(学校におけるいじめの防止等の対策のための組織)

学校は、当該学校におけるいじめの防止等に関する措置を実効的に行うため、当該学校の複数の教職員、心理、福祉等に関する専門的な知識を有する者その他の関係者により構成されるいじめの防止等の対策のための組織を置くものとする

 

これは「置くように」とか「置くことが望ましい」ではなく「置くものとする」です。

果たして、どれだけの学校が置いているでしょうか?

お子さんが通っている学校に聞いてみてください。

 

そして置いただけではなく、教職員に対してしッかりその理念を伝え、研修をすべきだと思います。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161202-00000028-asahi-soci

こんな事件も起きました。

担任は、子供に「菌」とあだ名をつけ呼んでいたにも関わらずそれを「いじめ」だと認識をしていなかったようです。

 

 

 

 

いじめ防止対策推進法とは4

第三章の基本施策についてみていきたいと思います。

 

第一五条は(学校におけるいじめの防止)です。

学校の設置者及びその設置する学校は児童等の豊かな情操と道徳心を培い、心の通う対人交流の能力の素地を養うことがいじめの防止に資することを踏まえ、全ての教育活動を通じた道徳教育及び体験活動等の充実を図らなければならない。

学校の設置者及びその設置する学校は、当該学校におけるいじめを防止するため、当該学校に在籍する児童等の保護者、地域住民その他の関係者との連携を図りつつ、いじめの防止に資する活動であって当該学校に在籍する児童等が自主的に行うものに対する支援、当該学校に在籍する児童等及びその保護者並びに当該学校の教職員に対するいじめを防止することの重要性に関する理解を深めるための啓発その他必要な措置を講ずるものとする。

 

つまり、学校はいじめを防止するための啓発運動、その他必要な措置を積極的に行うことを規定きているわけです。

 

一見すばらしい内容に見えます。これではいじめがなくならないこともわかりますが。

これがこの法律の限界だとも言えます。要は「いじめ防止対策」を推進するための法律なので、いじめ解決、対処推進法ではないわけです。予防をしているだけで終わらせることなく、「結果」

の具体的目標、それに対する責任の所在は不在なのですね。

 

次に第一六(いじめの早期発見のための措置)

4項にわたり、学校設置者、国及び地方公共団体に対し、定期的な調査、その他の必要な相談の措置を整備するよう、そしていじめを受けた児童等の教育を受ける権利その他の権利利益が擁護されるよう配慮するものとする内容が明記されています。

 

しかし、ここ最近の報道を見る限り、これが有効に機能しているとは言い難いですね。

 

続きは、なぜかエディタの不具合で色指定ができなくなってしまったので分けますね。

 

いじめ防止対策推進法とは3

本日は、第九条の保護者の責務と、第二章 十条から十三条の基本方針、そして十四条の(いじめ問題対策連絡協議会)を見ていきたいと思います。

 

(保護者の責務)として、保護者は子の教育について第一義的責任を有する者であるとし、子供に対していじめを行うことの内容、規範意識を養うための措置、必要な指導をするよう努めようと定めております。また被害者になった場合には、適切に保護するものとするとも定めてあります。

 

つまり、いじめが起きたことを学校に報告をし、いじめを解決するよう、そして再発防止、学校全体でいじめをなくすようにしてくださいと要望することは、保護者の義務でもあり、それをしたからといって「クレーマー」や「うるさい親」と学校から認定されることは、この法律の条文を見る限りあってはならないものであると考えてよいと思います。

 

そして、この条文の最後には、この規定は、家庭教育の自主性が尊重とされるべきことに変更を加えてはならず、またいじめの防止等に関する学校の設置者及びその設置する学校の責任を軽減するものとしてはならない、とあります。

 

そして、第二章の十一から十三条において、地方や学校、各行政機関の長と連携して、

  • いじめの防止等のための対策の基本的な方向に関する事項
  • いじめの防止等のための対策の内容に関する事項
  • その他いじめの防止等のための対策に関する事項

を踏まえて、基本的な方針を策定するよう定められています。

 

十四条(いじめ問題対策連絡協議会)では、

学校、教育委員会児童相談所、法務局又は地方法務局、都道府県警察その他の関係者により構成されるいじめ問題対策連絡協議会を置くことができることを定め、

都道府県は、この連絡協議会と当該市町村教育委員会との連携を図るために必要な措置を定めるものとする、とあります。また、必要な場合には教育委員会に附属機関として必要な組織を置くことができるとあります。

 

自分の住んでいる地方自治体の現状をまず把握して、必要であれば、附属機関設置に向けて議員等に動いてもらうようにしてみるとよいと思います。

 

逆に、これだけ、事件報道がなされているのに、何も動いていないのであれば、その地方自治体は本当に「いじめ防止」を考えているのか?ということの指標にもなろうかと思います。